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あの時…私は何を言おうとしていた?

そして、脳裏に浮かぶあの人はーーーー



戸惑うキモチ

「十代…私、あなたのことーー」

剣山くんら在校生主催のペアデュエル大会のあと、
私は十代にどうしても伝えたいことがあってレッド寮の近くで彼を待ち伏せていた。
伝えたいこと…それは私が十代に恋愛感情を抱いていることに今回のペアデュエルで気付いたのだ。
だからその気持ちを言葉にして伝えたくてこうして待っていた。

けど、何故だろう…
言葉に詰まる。
私、天上院明日香が一世一代の告白をしようとしているのに…。
ふと、脳裏に漆黒の服を纏った彼のことが浮かんだ。
彼は私のことを好きだと言ってくれた。
最初は欝陶しいと思ったけど、少しだけ嬉しかった。
こんな男勝りな私に真っ正面から想いを伝えてくるなんて…
いくら私の兄に唆されたことだとしても。
そんな彼のことを思い浮かべると、
言葉に詰まってしまった。

どうして?
私は十代が好きなはずなのに…。

私の口は反射的にまた違う言葉を紡ぐ。

「ううん、なんでもないの。今日は楽しいデュエルだったわ」

私としたことが何をやっているのだろう。
告白するはずが見事に自らそれを避けてしまった。
そんな私に十代は気にする様子も見せず(ちょっと酷いんじゃない!)
レッド寮に戻ろうとする。
しかし、もう一度戻って来て…

「ガッチャ☆楽しいデュエルだったぜ」

いつもの決め言葉とポーズをして私の前から去っていった。
初めて会ったときと変わらないとびっきりの笑顔だった。
心無しか私の胸が暖かくなるのを感じた。
私はそのとき気付いてしまった。

私は本当に十代を恋愛対象としてみていたのだろうか?
何かが違う気がする。
その何かがわからない…。

私の手の甲に何故だか知らないが、
冷たい水のようなものが零れ落ちた。

これはーーー涙だ。

私は十代に想いを伝えらるなかったから泣いているの?

何かが違うけど、自然と涙が出てくる。
何だかちょっと気恥ずかしくて指で涙を拭った。
私は一体…何がしたいのだろう…。







*******************







涙もおさまり、大分私自身も落ち着いてきた。

「さてと…寮にーーー「全く貴様らは気色悪い言い回しばかりするだ!」

寮に帰ろうと踵をかえそうとしたところ、
聞き覚えのある声が耳に届いた。

ーーーーこの声は万丈目くんだ。

しかも、何かに対してかなり怒っている様子である。
たまに万丈目くんは誰も人がいないのに怒ったり、怒鳴ったりしている。

そこに私には見えない何かがいるかのように…。

そういえば、十代にもそういうところがある。
この二人だけでいつも意味のわからない会話をしていたのを覚えている。

確か…カードの精霊がどうとか…。

本当にカードの精霊が見えるのなら羨ましい。

「あれ…?そこにいるのは天上院君……?」

精霊について深く考えていたら
目の前にはすでに学園ではただ一人が身につけている黒い服の彼、万丈目くんがいた。
私がいたことに酷く驚いているようだった。

「そうよ、万丈目くんこそこんな時間に何してるの?」
「俺、いや僕はちょっと夜の散歩をしていたところだ。
そういう天上院君こそ何をしていたんだい?」
「私はちょっと十代に用があって…もう用は終わったけどね」

私は明るく笑って言い放った。
万丈目くんの顔を見ると、複雑そうな顔で私を見ていた。
十代と言ったのがまずかったかしら…
でも、レッド寮には今十代しかいないし嫌でも十代に用があるってわかるはず。
きっと万丈目くんだってそれくらいわかる。
そして、いつものように
「そうか」
って言い返してくれると信じていた。
そうこの言葉が彼の口から出るまでは…

「……十代に何かされたのかい?」
「え!?そんなことはーー」
「だったら…何故泣いているんだい?」
「っ///!?」

え…私が泣いている?

確かにちょっと前までは泣いていたけど、
さっき確認したときは涙はおさまったはずだ。

ポタッ

ーー!?

地面に雨が落ちる。
今は雨など降っていない。
ということは私、本当に泣いているの…?

「何でかしら…本当に私泣いてる……」

もう何が何だかわからない。
とにかく涙が溢れ出る。
よく考えたら万丈目くんに見られているのよね…頬が段々熱くなる。

は、恥ずかしい///

泣いている顔を彼に見られたくなくて、顔を両手で覆い背を向けた。

「べ、別に十代に何かされた訳ではないのよ!だからーーー」

十代のことは攻めないで…。

私の言葉に彼の反応がない。
まさか十代の元に行って説教でもする気なのかしら…?
そうだとしたら大変だわ!
十代に迷惑を掛けることになる。
それだけは避けなければならない。

「ま、万丈目くん!違うの!!十代は悪いことなんてしてないの」

私の口から出る言葉は十代をフォローするものだった。
確かに間違ってはいない。
また万丈目くんの反応がない。
もしかして、本当に行ってしまった…?

私は涙を拭って、彼の方へ向きを変える。
まだ彼は俯きながら、そこにいた。
では、何故反応がないの…?

「万丈目くん…?」

そう呼び掛けると、彼はバッと顔を上げ、
ズボンのポケットからライトグリーンのハンカチを私に差し出してきた。

「え…?」
「泣きたいときは泣いた方が楽になるよ」
「…///!!?」

何を言い出すのかと思えば、私に対する気遣いの言葉だった。
そんなことない!と言おうとしたけど、また涙が溢れてくる。
図星だった。
私は彼からハンカチを受け取り、涙を拭った。
心なしか気持ちが楽になった。
そんな私に彼は何があったのか聞くこともなく、
ただ私を真っすぐ見つめていた。
ただ見つめているだけなのに、
彼の瞳はとても優しくて安心することができた。



***END***



*あとがき*
中途半端に終わってしまい、すみません;
初のGX小説もどきですが、文章力のなさがまるわかりになりましたね;
しかも、明日香さんが別人;
本当に申し訳ないです(滝汗)
頑張って明日香さんの心の変化を書いたつもりです…
一応161話のあとが舞台です 。
万明日派な私にとって161話はうーん;な話でした(どんなだよ)
でも、明日香さんが十代を本当に好きだったか?
となると私は違うと思います(うわ)
多分続きます。
明日香さんの気持ちがじょめに向くまで頑張ります^^

ちなみに某少女漫画に男の子が泣いている女の子にハンカチを差し出しているシーンがあったと思った方!
きっと私と同世代です(笑)

長月ユリナ

      2008 3 10